1up!のpicoさんからいただきました!
picoさんの作品のBaby Boyの番外編です。
ちっちゃいエースのお話なので先に元の作品を見てこられたほうがよろしいかと。
picoさんのサイト




























温かい午後の陽ざしを受ける甲板の一角。
昼寝をするにも遊びまわるにもうってつけの穏やかな日を、エースは読書を楽しむ白ひげの膝の上を陣取って、自らも絵本を開いて過ごしていた。エースの膝の上でページを広げる真新しい装丁の絵本は、補給で立ち寄った島でのお土産としてティーチがくれたものだ。『青い鳥』と書かれた絵本の表紙には、タイトルと同じ青い羽根の鳥のイラストが描かれている。


「ねぇ親父、青い鳥って本当にいるのかな」

一ページ目で止まったままのエースは、白ひげを見上げ尋ねた。

「エースは居ると思うか?」

「居る、居るよ!絶対」

「じゃあ居るんじゃねえか」


居ると言う根拠は無いけれど、居ない、と言い切る根拠も無い。だったら居ると信じていたい、とそう願うのは当然のことだった。白ひげの答えに満足したようにエースはにかっと歯を見せ、そうだよね、と頷いてから視線を絵本へと戻した。


物語は幼い兄妹が、お婆さんの願いで幸せを呼ぶと言う青い鳥を探して世界を廻るという内容だった。時折、ふぅん、やら、へぇ、やら相槌を挟みながら、エースの視線は右から左へと澱みなく文字を追う。


――青い鳥を見つけると、幸せになれるんだよ


目を輝かせて兄にそう笑う妹の姿が、自分の弟の姿と重なる。


きっとルフィなら同じことを言うに違いない。
おれの手を引いて、一緒に探しに行こう、と笑うのだ。


ふふ、とエースは笑みを零す。
ルフィに会いたいと思う気持ちは募るけれど、最初の頃のように涙が出るほど不安になることは無くなっていた。会えないことが辛いのではなく"会いたい"と言えないことのほうが辛いのだと、マルコに教えられたからだ。過保護過ぎると言われているマルコを筆頭にして、膝を貸してくれる白ひげも、お風呂に入れてくるジョズも、遊んでくれるサッチも、ティーチもビスタも、皆が皆自分を大切に思ってくれている。

大切にしてくれるからこそ、弟に会いたいと願う気持ちを言えずにいたのだ。こんなに良くしてくれているのに、弟に会いたいなんて、それは皆に対する裏切りではないか。

幼い心を蝕んでいく寂しさに押しつぶされそうなエースを救ってくれたのは他ならぬマルコだった。本音を聞かせろ、とエースを抱きしめ、会いたいと泣いたエースに、それは罪なことじゃない、とマルコは言った。


『子供なんだから、我儘でいいんだ』

あの日ほど泣いたことは無い。涙が枯れるまで、声が出なくなるまでエースは泣いた。
その日から、エースはルフィの名をよく口にするようになっていた。会いたいな、と笑って言えるようになっていた。そして誰もそれを咎めることはせず、会わしてやりたいな、と言ってくれた。




「青い鳥なんて見つけなくても、幸せにはなれるのに」



誰に言うでもなくエースは呟いた。
大切な弟が居て、大好きな人たちが居る。

エースにとっての幸福は、すべてがもうそこにあった。


「親父、」


ねぇ、と問いかけるエースに、白ひげは書籍から目を離さずにどうしたんだ、と返す。


「おれはね、青い鳥を見つけなくても幸せだって思うんだ」

「……そりゃあ良かった」

「この絵本の鳥が逃げてったのはさ、幸せにすることに疲れたからだと思うんだ」

「ほう?」

何故、と問うた白ひげにエースは続ける。

「青い鳥を見つけた人間は幸せになれるけど、青い鳥のことを誰が幸せにしてやるんだ?」


ふ、と白ひげの視線が文字列からエースの黒い頭へ、そしてその膝の上の絵本へと流れた。鳥籠から飛び立った青い鳥が描かれた最後のページ、そこでエースの手は止まっていた。


「こいつは誰かを幸せにするために生まれてきたんじゃない」


言葉を選びながら、何度も首を傾げ、それでもエースは言葉を紡いでいく。


「おれは、うん。もう十分幸せなんだ。鳥を見つけなくても、幸せになれたんだ」

「どうしたってんだ、エース」


困ったように眉を寄せるエースの髪を白ひげはくしゃりとかき混ぜた。無理に言葉にしなくてもいい、とそう言うつもりだったのだが、エースは何かを思いついたようにがばっと白ひげを見上げた。

「あ、そっか。簡単なことだった。おれの幸せを、青い鳥に分けてあげればいいんだ」


どうだろう、と白ひげを見上げるエースの瞳は、この青空のように澄んで、キラキラと輝いていた。十年と言う短い人生の大半を、虐げられて過ごしてきたであろう子供が、やっと掴んだ微かな幸せを誰かにあげたい、と言えるだろうか。いや、そもそもこの年の子供が"私は幸せです"と自覚すること自体がそもそも難しいのではないだろうか。当たり前に繰り返す日常を幸せだと感じるのは大人でも難しい。


「おれが幸せにしてやれば、こいつも幸せになれるだろ?」


ぱたん、と絵本を閉じたエースは、満足そうに白ひげの膝の上から降りた。そして、青い鳥を探しにいってくる、と勢いよく階段を駆け下りて行くのを白ひげは静かに見送る。


「……幸せにしてくれるってよ」


エースが駆け下りて行ったのとは反対の階段。そこに向かって、白ひげは声を掛けた。


「頼む親父。今はそっとしといてくれよい」


階段の中腹に蹲り、膝に顔を埋めるのは冷酷無比で有名な、最近では過保護なお父さんとも呼ばれる白ひげ海賊団一番隊隊長の姿。その耳は見事なまでに赤く染まり、肩はぷるぷると震えている。


「幸せの青い鳥、ねぇ。エースなら確実だろうな」


なぁ、と笑った白ひげの言葉に、返答するだけの余裕はマルコには無かった。







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1up!のpicoさんからいただきました!
絵チャでの絵のお礼に、とすんばらしいものを頂いてしまいました・・ふおお、エースくんかわいすぎるでよ。
青い鳥をしあわせにしてあげてくださいね、エースくん。
もうしあわせかもしれないけれど。笑。

picoさんほんとうにありがとうございました^^